キリンジの兄、堀込兄のソロプロジェクトの「グラノラボーイズ」でこのアルバムに収録されている「Witchi Tai to」を演奏したと聴いて、何ともいえない胸のむずがゆさを覚えた。といってもイライラしたのではなく、羨ましさと聴きたい気持ちととずるい!の入り混じった感情である。グラのラボーイズのCDは出ないらしく、そのむずがゆさは今も胸のどこかでうずうずしている。「Witchi Tai to」を最初に聴いたのは「カフェ・アプレ・ミディ」のコンピレーションだったが、情報がほとんどなく適当にMDに入れていたやつだったので、あとで誰の曲かもわからず、そのままかっこいいなと何度も聴いていた。ちなみに読み方もわからないままだった。今ではハーパースがやっている事を知り、さらに聴いている。ともかくこの「Witchi Tai to」は本当に好きで、今使っているipodの聴いた回数は堂々の一位である。
この「4」はこれまで3作と違って、メンバーのテッドテンプルマンとディックスコパートンが曲の選択から、アレンジ、演奏まで担当している。付属のライナーノーツによれば、この頃のグループはだいたい映画の役者のように、レコード会社が指示するように動く必要があったそうで、自分のオリジナルの曲をレコードに入れるのも会社側と戦う必要があったらしい、会社が指定する曲は著作権が会社の方にいくから、その辺はまさにお金の問題になる。しかもヒットしている曲ばかりだから、なおのことだろう。だから、オリジナルを指向したメンバーにとって、シークレットオブハーパースビザールの時のオリジナル曲の3曲は勝ち取ったものだったという事になる。4は、自由が認められたらしく、メンバー色の好みが強くでている、らしい(個人的にはあまりわからないけれど)わかるのはそのせいかドラムスやビート音が強くなっているように感じられることである。
1曲目の「Soft Soundin’ Music」はギターが力強くロック色が濃い、それでも変わらずドリーミーな歌声がユニゾンでばっちりはいってくる。リマスターされた最近のCDは本当に音がよくて、楽器一つ一つの音が良くはっきり聴こえる。2曲目の「Knock on Wood」はまってましたのアレンジはデカロ様、「Here comes the sun」みたいなメロディがキラキラしていくエンディングの、サイケな感じもいいです。この曲は助走のイメージがある。そうして「Witchi Tai to」の登場。もしかしたら、全ジャンルで一番好きな曲かもしれない。アレンジはベリーボトキンjr。メンバーが自分で楽器を演奏しているらしいです。
その後は、ライナーはわりと赤裸裸な感じで、「When the band begins to play」でベース、ドラム、ギターを先に録音して後でホーンプレイヤーがあわせる際にテンポが間違っていると指摘されたエピソードが紹介されている。
マリアンヌ・フェイスフル版がだいぶ好きで良く聴いていた「Something better」、ロックンロールサーカスの時にものを良く聴いてました。ビートルズのホワイトアルバムに入っていた名曲「black bird」、ギター練習した記憶あり、ぜったいやりたくなりますよねという感じ。アレンジはジャックニチェ。からすのことではありません。
ハーパース7枚目のシングルになったケニーランキン作の「Cotton Candy Sandman」が再び登場。ボーナストラックに入っていたのと聴き比べするのが楽しい。途中の楽器の音が消えてアカペラ化するところのアレンジがかなり違ってます。4の方が音を減らしたアレンジでより洗練された印象。ラストの「 Leaving on a Jet Plane」は、ハーパースのライブの最後の曲はいつもこれだったらしい。ジョン・デンヴァーの曲だが、恥ずかしながら最近までピーター、ポール&マリーの曲だと思い込んでいた。
ここから3曲のシングルがリリースされたがどれもヒットせず、翌年70年にメンバーは解散し別の道を選ぶことになる。(6年後にテッド抜きで再結成しますが)
その後のメンバーはそれぞれの道に進みますが、何と言ってもリーダー格だったテッド・テンプルマンが出世頭で、ワーナーのプロデューサとなりヴァン・モリソンやリトル・フィートなどを手がけていくことになります。解散した理由は、売れなかったのかもしれませんが、70年代という時代の壁が一番の理由だと考えられます。スタジオで職人のような作曲家がアレンジを施し、歌い手は別というソフトロックの基本的な製作システムがじょじょに衰退していく時期でもありました。
1. Soft Soundin’ Music
2. Knock on Wood
3. Witchi Tai to
4. Hard to Handle
5. When the Band Begins to Play
6. Something Better
7. Blackbird
8. I Love You, Alice B. Toklas
9. There’s No Time Like Today
10. All Through the Night
11. Cotton Candy Sandman (Sandman’s Coming)
12. Leaving on a Jet Plane